レアアースの7割は中国で生産されているという。なんと、世界の「ハイテクの心臓」の7割が一国に握られている計算である。スマホ、EV、風力発電機、さらには最新鋭の戦闘機まで、どれもこの小さな金属たちがなければ、ただの鉄くずかプラスチックの塊でしかない。レアアースとは、ざっくりいえば貴重な金属のことである。全部で17の元素が該当し、その中でもネオジム(Nd)は磁石としてとても有名である。
レアアースの需要がさらに増すにつれて、中国の存在感はより一層大きくなるだろう。特にEVブームが加速する今、ネオジム磁石なしでは未来の車輪も回らない。つまり、「ネオジムを制する者が世界を制す」と言っても過言ではない。まるで中世ヨーロッパで「塩」を握った国が経済を支配したのと同じ構図である。資源とは、ただの石ころではなく、国家の交渉カードであり、経済のレバーである。
もちろん、その力をどう使うかは別問題である。レアアースを政治カードとして使えば、「欲しいならこちらの条件を呑め」となる。これはもはや外交というより、資源を使った“駆け引き将棋”である。たとえば、他国が「ネオジムの輸出を止められたら困る」と焦る一方で、中国は「では、こちらの技術を共有してはどうか?」と一手を指す。こうした戦略の盤上で、世界は静かに動いているのだ。
一方で、ふと疑問が湧く。鉱石といえばアフリカのイメージが強い。「地球の宝箱」とも呼ばれ、金やダイヤ、コバルトなどがザクザク出るイメージなのがアフリカである。にもかかわらず、なぜレアアースは中国が独占しているのか?地球儀の上で中国がレアアースのベルト地帯にでもなっているのかと思ったが、そうではないだろう。このカラクリは「産出地」と「生産地」は違うということにある。要は、掘り出すだけでなく、精錬して使える形にする「技術と設備」が中国にはあるから、生産量が多いのだろう。
資源を持つというのは、力を持つということ。そして、その力をどう使うかで、国の未来が決まる。レアアースの17の元素たちは、まるで国際政治の舞台で踊る17人の俳優のようである。既に出世して著名な主役もいれば、これから出てくる金の卵もいる。だが共通しているのは、どの一人も需要という大きなポテンシャルを秘めているということだ。そう考えると、レアアースとはまさに「地球が生んだ芸能事務所」なのかもしれない。
参考情報
2025/10/12 日本経済新聞:レアアース 中国が生産シェア7割(きょうのことば)
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