新聞記事から考える 10:夢のある未来-痛みを共有化する技術-

新聞記事から考える

 NTTドコモが「痛みを共有する技術」なるものを開発したらしい。なんともSF映画のような響きである。脳波を測定し、人間が感じる痛みを定量化し、それを別の人に“おすそ分け”するというのだ。記事によると、熱刺激で痛みを表現していたそうで、つまり、誰かが感じた痛みを感知し、別の人に「熱っ」という感覚で共有するということだ。科学もついに「共感」を物理で再現しようとしているのである。

 これを聞いて真っ先に思い浮かんだのは、ゲームの世界である。たとえばRPGでダメージを受けた時、コントローラーがブルブル震えるどころか、実際にヒリヒリ痛んだらどうだろう。ゾンビに噛まれたら腕がジーンとし、ファイアボールを食らえば指先が熱い。まさに「体感型エンタメ」の極致である。ゲーマーの間で「痛み設定:強」にする猛者が現れたら、それはもう修行僧の域だ。

 応用範囲はそれだけにとどまらない。例えば「出産の痛み」を体験するプログラムなどが開発されたら、世の男性陣の価値観は根本から変わるかもしれない。「お前、陣痛なめんなよ」という言葉に、説得力が3倍増しになるだろう。夫が「俺も体験してみたけど…死ぬかと思った」と青ざめながら言う未来が見える。もしかすると、家庭の平和に一役買う技術になるかもしれない。

 また、医療分野にも大きな可能性がある。医師が患者の痛みを直接感じられれば、より正確な診断や治療ができるだろう。問診で「どれくらい痛いですか?」「10段階で言うと8くらい…」というあの曖昧なやり取りも、「なるほど、これは確かに8.3ですね」と定量的に理解できる日が来る。まさに“痛みの翻訳機”である。

 とはいえ、考えようによってはちょっと怖い。感情を共有するだけでも疲れるのに、痛みまで共有したら、世界は全員ムチ打ち状態になるのではないか。SNSで「心が痛い」とつぶやいた瞬間、全員が肩を押さえてうずくまる、そんな阿鼻叫喚の未来はごめんこうむりたい。

 それでも、技術の進歩は止まらない。遠い未来、「痛みを共有できる社会」は、もしかすると「本当の優しさ」を育むかもしれない。誰かの痛みを本当に感じることができれば、軽はずみに傷つける言葉も減るだろう。そう考えると、NTTドコモの実験室で生まれたこの技術は、単なるガジェットではなく、人間理解の新しい扉を開けるかもしれない。

 まさに“痛みを分け合う時代”の幕開けである。ちょっと怖いが、少しワクワクするのも事実だ。

参考情報
2025/10/23  日本経済新聞:世界初の「痛み共有」技術 ドコモ、脳波の解析で個人差補正(記者がトライ)

コメント

タイトルとURLをコピーしました