はじめに
今回も、応用情報技術者試験の過去問を解いていきます。
今回のテーマは、システム監査基準(令和5年)における「監査調書」です。
システム監査では、
- 監査計画
- 監査証拠
- 監査調書
- 監査報告書
など、似たような用語が数多く登場します。
特に今回の問題では、
「監査調書は何のために作成するものなのか」
を理解しているかがポイントになります。
単なる用語暗記ではなく、監査の流れの中で、それぞれの文書がどんな役割を持っているのかを整理していきましょう。
問題
問58 システム監査基準(令和5年)が規定している監査調書の説明として、最も適切なものはどれか。
選択肢
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| ア | 監査の結論に至った過程を明らかにし、監査の結論を支える合理的な根拠とするための記録 |
| イ | 監査の目的に応じた適切な形式によって作成し、監査依頼者に提出する、監査の概要と監査の結論を記載した要約版の報告書 |
| ウ | システム監査対象ごとに、具体的な監査スケジュールを定めた詳細計画 |
| エ | システム監査の中長期における方針等を明らかにすることを目的として作成する文書 |
解答
正解
ア
監査の結論に至った過程を明らかにし、監査の結論を支える合理的な根拠とするための記録
これが 監査調書 の正しい説明です。
解説
監査を行った結果、
「このシステムには問題があります」
という結論を出したとします。
しかし、単に監査人が「問題だと思いました」と言うだけでは、監査として十分ではありません。
その結論について、
- どのような監査手続を行ったのか
- どのような監査証拠を入手したのか
- どのような事実を確認したのか
- そこからどのように判断したのか
を説明できる必要があります。
そのために作成される記録が監査調書です。
監査全体の流れを簡単に整理すると、次のようになります。
監査を実施する
↓
監査証拠を集める
↓
確認した事実を整理する
↓
判断・検討を行う
↓
監査調書に記録する
↓
監査の結論を形成する
↓
監査報告書で報告する
つまり、
監査調書は「なぜその監査結論になったのか」を説明するための記録
と考えると分かりやすいです。
ここで注意したいのは、
監査証拠と監査調書は同じものではない
という点です。
監査証拠は、監査人が判断するために入手・評価する情報です。
一方、監査調書は、監査で実施した内容や監査証拠、判断に至る過程などを記録するものです。
| 用語 | 役割 |
|---|---|
| 監査証拠 | 監査人が結論を出すために利用する証拠・情報 |
| 監査調書 | 監査手続、監査証拠、確認した事実、判断過程などを記録するもの |
各選択肢を確認する
| 選択肢 | 判定 | 内容 |
|---|---|---|
| ア | ○ | 監査調書の説明 |
| イ | × | 監査報告書に関する説明 |
| ウ | × | 個別監査計画に関する説明 |
| エ | × | 中長期監査計画に関する説明 |
ア:監査調書
アは、
監査の結論に至った過程を明らかにし、監査の結論を支える合理的な根拠とするための記録
となっています。
これはシステム監査基準における監査調書の考え方に一致します。
したがって正解です。
イ:監査報告書
イには、
「監査依頼者に提出する」
という記述があります。
これは監査調書ではなく、監査報告書に関する説明です。
監査報告書は、監査結果や監査の結論などを監査依頼者や関係者へ報告するために作成されます。
監査調書と監査報告書は、次のように整理すると分かりやすいです。
| 項目 | 監査調書 | 監査報告書 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 監査の実施内容や結論の根拠を記録する | 監査結果や結論を報告する |
| 内容 | 監査手続、監査証拠、確認事項、判断過程など | 監査結果、結論など |
| イメージ | 監査の裏付けとなる記録 | 監査結果を伝える文書 |
覚え方としては、
監査調書=結論の根拠を残す
監査報告書=結論を伝える
と整理するとよいでしょう。
ウ:個別監査計画
ウは、
システム監査対象ごとに、具体的な監査スケジュールを定めた詳細計画
となっています。
これは監査調書ではなく、個別監査計画に関する説明です。
令和5年版のシステム監査基準では、監査計画は大きく、
- 中長期計画
- 年度計画
- 個別監査計画
に整理できます。
個別監査計画では、実際に行う個々の監査について、
- 監査対象
- 監査目的
- 監査方法
- 監査スケジュール
などを具体化します。
したがってウは不正解です。
エ:中長期監査計画
エは、
システム監査の中長期における方針等を明らかにすることを目的として作成する文書
となっています。
これは中長期監査計画に関する説明です。
中長期監査計画では、その場限りの監査スケジュールではなく、中長期的な観点から監査の方針などを整理します。
したがってエも監査調書ではありません。
問題の用語解説
監査調書
監査調書とは、監査人が監査を行った際の、
- 実施した監査手続
- 入手・評価した監査証拠
- 確認した事実
- 監査人の判断や検討内容
などを記録したものです。
監査調書によって、
「なぜこの監査結論になったのか」
を後から確認できます。
例えば、学校のテストに置き換えてみましょう。
先生が、
「この答案は70点です」
と言ったとします。
70点という結果だけでは、
「なぜ70点なの?」
となります。
そこで、
問題1:○
問題2:×
問題3:○
問題4:部分点
↓
合計70点
という採点記録があれば、なぜ70点になったのか説明できます。
監査調書もこれに近く、
監査結果に至った過程を残しておく記録
と考えると理解しやすいです。
監査報告書
監査報告書は、監査の結果や結論を監査依頼者などへ報告するための文書です。
監査調書が「根拠を残す記録」なのに対して、
監査報告書は「結果を伝える文書」です。
個別監査計画
個別監査計画は、具体的な監査対象について、
- 何を監査するか
- どのように監査するか
- いつ監査するか
などを定める計画です。
中長期監査計画
中長期監査計画は、中長期的な観点から、今後どのような方針でシステム監査を実施していくかを整理するものです。
監査関連の用語を整理する
今回の問題では、監査関連の文書をセットで整理しておくことが重要です。
| 文書・項目 | 主な役割 |
|---|---|
| 中長期監査計画 | 中長期的な監査方針などを定める |
| 年度監査計画 | 年度単位の監査計画を定める |
| 個別監査計画 | 個々の監査について対象・方法・スケジュールなどを定める |
| 監査証拠 | 監査人が判断・結論を形成するために利用する情報 |
| 監査調書 | 監査手続や監査証拠、判断過程などを記録する |
| 監査報告書 | 監査結果や監査の結論などを報告する |
システム監査の流れ
全体の流れも押さえておきましょう。
監査計画
├─ 中長期計画
├─ 年度計画
└─ 個別監査計画
↓
監査の実施
↓
監査証拠の入手・評価
↓
監査調書の作成
↓
監査結論の形成
↓
監査報告書の作成
↓
フォローアップ
今回問われているのは、
「監査をどのように行い、どのような根拠から結論を導いたのかを記録するもの」
です。
それが監査調書です。
体系的位置づけ
応用情報技術者試験のシラバスでは、この問題は次の位置にあります。
マネジメント系
↓
サービスマネジメント
↓
システム監査
↓
システム監査基準
システム監査では、
- 監査計画
- 監査手続
- 監査証拠
- 監査調書
- 監査報告
- フォローアップ
などが重要なキーワードになります。
それぞれを単独で暗記するよりも、監査の流れとして覚える方が理解しやすくなります。
今回の問題の重要ポイント
今回もっとも重要なのは、
監査調書=監査の結論を支える記録
という点です。
特に試験では、
監査調書と監査報告書
の違いに注意しましょう。
| キーワード | 答え |
|---|---|
| 結論に至った過程 | 監査調書 |
| 合理的な根拠 | 監査調書 |
| 監査証拠・監査手続の記録 | 監査調書 |
| 監査結果を報告する | 監査報告書 |
| 具体的な監査対象やスケジュール | 個別監査計画 |
| 中長期の監査方針 | 中長期監査計画 |
問題文で、
「結論を支える合理的な根拠」
という表現が出てきたら、
監査調書
を連想できるようにしておきましょう。
まとめ
今回の問題では、システム監査基準(令和5年)における監査調書について問われました。
正解は、
ア
です。
監査調書とは、
監査の結論に至った過程を明らかにし、その結論を支える合理的な根拠とするための記録
です。
今回のポイントをまとめると、
- 監査調書は監査の実施内容や判断過程を記録する
- 監査証拠と監査調書は同じものではない
- 監査報告書は監査結果や結論を伝える文書
- 個別監査計画は具体的な監査内容やスケジュールを定める
- 中長期監査計画は中長期的な監査方針などを定める
という点です。
特に、
「監査調書=結論の根拠を残す」
「監査報告書=結論を伝える」
という違いは、試験対策として押さえておきたいポイントです。
監査関係の用語は名前だけを見ると似ていますが、監査の流れに当てはめて整理するとかなり覚えやすくなります。

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