はじめに
今回も、応用情報技術者試験の過去問を解いていきます。
今回のテーマは、IoTを活用したビジネスモデルと「マスカスタマイゼーション」です。
IoTというと、センサーでデータを集めたり、遠隔操作をしたりする技術をイメージしやすいですが、応用情報技術者試験では、それらの技術をどのようなビジネスに活用するのかという視点も問われます。
今回登場する「マスカスタマイゼーション」は、IPAの応用情報技術者試験シラバスにも掲載されている重要用語です。
ポイントは、
「個別対応」と「大量生産の効率性」を両立させること
です。
問題
IoTを活用したビジネスモデルの事例のうち、マスカスタマイゼーションの事例はどれか。
選択肢
| 選択肢 | 内容 |
|---|
| ア | 建機メーカーが、建設機械にセンサーとGPSを搭載し、稼働場所や稼働状況を可視化する。盗難時には遠隔操作によってエンジンが掛からないようにする。 |
| イ | 航空機メーカーが、エンジンのセンサーから稼働データを収集・分析し、航空会社に予防保守情報を提供する。 |
| ウ | 自動車メーカーが、稼働状況を把握するセンサーと遠隔解錠装置を搭載し、カーシェアサービスを提供する。 |
| エ | 眼鏡メーカーが顧客の顔を3Dスキャンし、顧客に合ったフレームを設計する。設計情報を工場に送り、パーツを組み合わせて効率的に製造する。 |
解答
正解:エ
解説
この問題を解くには、まず「マスカスタマイゼーション」の意味を理解する必要があります。
マスカスタマイゼーションとは
マスカスタマイゼーションは、
Mass Production(大量生産)
+
Customization(個別対応)
という考え方を組み合わせたものです。
簡単に言えば、
顧客ごとのニーズに合わせた商品を、大量生産に近い効率で提供する仕組み
です。
完全なオーダーメイドでは、顧客ごとに一から設計・製造するため、一般的にコストや時間が掛かります。
一方、大量生産では効率よく安価に製造できますが、一人ひとりの細かな要望には対応しにくくなります。
マスカスタマイゼーションは、この2つの「いいところ取り」を目指します。
イメージ
完全オーダーメイド
個別対応:高い
生産効率:低い
↓
マスカスタマイゼーション
個別対応:高い
生産効率:高い
↓
大量生産
個別対応:低い
生産効率:高い
「何でも自由に作れる」ことよりも、
標準化された部品や工程を活用しながら、顧客ごとに違う製品を効率よく作れる
ところが重要です。
なぜ「エ」が正解なのか
選択肢エでは、まず店頭で顧客の顔を3Dスキャナーによって読み取っています。
その後、
顧客の顔を3Dスキャン
↓
顔の形状をデジタル化
↓
顧客に合ったフレームを設計
↓
設計情報を工場へ送信
↓
標準化されたパーツを組み合わせて製造
という流れになっています。
ポイントは、
顧客ごとに商品を最適化している
だけではありません。
さらに、
パーツの組合せなどによって効率的に製造している
ことです。
つまり、
個別対応 × 生産効率
が実現されています。
これがマスカスタマイゼーションの特徴です。
各選択肢の解説
| 選択肢 | 主な特徴 | マスカスタマイゼーションか |
|---|---|---|
| ア | IoTによる遠隔監視・遠隔制御、盗難対策 | × |
| イ | センサーデータを利用した予防保守・保全支援 | × |
| ウ | IoTを活用したカーシェアサービス | × |
| エ | 顧客別設計と効率的な製造の両立 | ○ |
ア:遠隔監視・遠隔制御
建設機械にセンサーやGPSを搭載し、
- 稼働状況を確認する
- 位置情報を把握する
- 遠隔操作でエンジンを停止する
という仕組みです。
これはIoTを利用した遠隔監視・遠隔制御の事例と考えるのが適切です。
顧客ごとに製品をカスタマイズして生産しているわけではないので、マスカスタマイゼーションではありません。
イ:予防保守・保全支援
航空機のエンジンに取り付けられたセンサーからデータを集め、その情報を分析して保守に役立てています。
重要なのは、
製品を個別設計しているのではなく、データを保守に利用している
ことです。
そのため、マスカスタマイゼーションには当たりません。
なお、故障の兆候を予測して保守する場合には「予知保全」という言葉も使われますが、今回の問題文では「予防保守情報」と表現されています。
ウ:カーシェアサービス
自動車に、
- 稼働状況を取得するセンサー
- 遠隔解錠装置
を搭載してカーシェアサービスを実現しています。
IoTを利用して新しいサービスを提供している事例ですが、顧客ごとに自動車をカスタマイズして生産しているわけではありません。
したがって不正解です。
エ:マスカスタマイゼーション
顧客の身体情報をデジタル化し、その人に適した製品を設計しています。
さらに、工場では標準化された部品の組合せなどによって効率的に生産します。
したがって、
個別対応と大量生産の効率性を両立するマスカスタマイゼーション
に該当します。
問題の用語解説
IoT(Internet of Things)
IoTは、日本語では「モノのインターネット」と呼ばれます。
機械や家電、自動車などの「モノ」にセンサーや通信機能を持たせ、インターネットなどを通じてデータを収集・交換する仕組みです。
例えば、
- 工場設備の稼働状況を監視する
- 自動車の位置情報を取得する
- 家電をスマートフォンから操作する
- 機械の故障兆候を検知する
といった用途があります。
マスカスタマイゼーション
マスカスタマイゼーションとは、
個々の顧客ニーズに合わせた製品を、大量生産に近い効率で提供する考え方
です。
「オーダーメイド」と似ていますが、完全に一から作るのではなく、
- 部品を標準化する
- 選択肢をパターン化する
- 設計をデジタル化する
- 製造工程を自動化する
といった工夫によって、生産効率を高める点に特徴があります。
予防保守
機械が故障してから修理するのではなく、一定の基準やデータをもとに、故障する前に点検や部品交換などを行う考え方です。
IoTによって機械の状態を継続的に把握できるようになったことで、より高度な保守が可能になっています。
サービタイゼーション
製造業などが、製品そのものを販売するだけではなく、
- 保守
- 稼働監視
- 利用支援
- 成果保証
などのサービスを組み合わせて価値を提供する考え方です。
例えば、
従来
機械を販売
↓
売って終わり
サービス化
機械
+
保守
+
監視
+
利用支援
というイメージです。
体系的位置づけ
マスカスタマイゼーションは、応用情報技術者試験のシラバスでは、ストラテジ系の経営戦略分野に関連する用語です。
より細かく見ると、
ストラテジ系
└─ 経営戦略
└─ 経営戦略マネジメント
└─ マーケティング
└─ マーケティング戦略
└─ 製品戦略
└─ マスカスタマイゼーション
と整理できます。
単なるIT技術の用語ではなく、
「技術を使ってどのような商品・サービスを提供するか」
という経営・マーケティング寄りの考え方です。
今回の問題の重要ポイント
今回の問題では、選択肢すべてにIoTが登場しています。
そのため、
「IoTを使っているかどうか」
では判別できません。
重要なのは、
IoTを何のために使っているのか
を見ることです。
試験では、次のように整理すると判断しやすくなります。
| キーワード | 判断ポイント |
|---|---|
| 遠隔監視・遠隔制御 | 機械の状態や位置を確認・操作する |
| 保守・保全 | センサーデータから機械の状態を判断する |
| カーシェア | IoTを使ってサービスを提供する |
| マスカスタマイゼーション | 個別対応と効率的な生産を両立する |
特に覚えておきたいのは、
マスカスタマイゼーション = 個別対応 × 大量生産の効率性
です。
この式を覚えておけば、似た問題にも対応しやすくなります。
まとめ
今回の正解は、エです。
マスカスタマイゼーションとは、
顧客ごとのニーズに対応しながら、大量生産に近い効率で製品を作る考え方
です。
今回の眼鏡の例では、
- 顔を3Dスキャンする
- 顧客ごとにフレームを設計する
- 設計情報をデジタルで工場へ送る
- 標準化されたパーツを組み合わせて効率的に製造する
という仕組みが使われています。
単なるオーダーメイドではなく、
「個別対応」と「効率的な生産」の両方があるか
を見るのが最大のポイントです。
応用情報技術者試験では、IoTそのものの仕組みだけでなく、
「IoTをどのようなビジネスモデルに結び付けているのか」
という視点も押さえておきましょう。

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