応用情報技術者試験過去問を解いてみた R6年度 春期 問42

応用情報技術者試験

はじめに

今回も、応用情報技術者試験の過去問を解いていきます。

今回のテーマは、IPv6通信とIPsecです。

ネットワークでは、通信を安全にするためにさまざまな技術が使われています。

今回の選択肢に登場する、

  • IPsec
  • PPP
  • SSH
  • TLS

も、それぞれネットワーク通信に関係する技術です。

ただし、役割や動作する位置は同じではありません。

今回の問題では、特に

「ネットワーク層で暗号化する」

という部分が正解を見つけるポイントになります。」という典型問題を解説します。


問題

PCからサーバに対し、IPv6を利用した通信を行う場合、ネットワーク層で暗号化を行うときに利用するものはどれか。

選択肢内容
IPsec
PPP
SSH
TLS

解答

ア IPsec


解説

今回の問題で注目したいのは、

「IPv6」

「ネットワーク層で暗号化」

という二つのキーワードです。

特に決め手となるのは、ネットワーク層です。

IPsec(Internet Protocol Security)は、IP通信にセキュリティ機能を提供する仕組みです。

RFC 4301では、IPsecはIPv4とIPv6の両方を対象とし、IP層でセキュリティサービスを提供するものとして規定されています。

したがって、

アプリケーション
       ↓
     TCP/UDP
       ↓
┌─────────────┐
│     IP             │
│   IPsec            │ ← 今回はここ
└─────────────┘
       ↓
データリンク
       ↓
     物理層

というイメージになります。

つまり、

IPのレベルで通信を保護する → IPsec

と覚えておくと判断しやすくなります。


IPsecは何をしているのか

IPsecは一つの暗号化方式の名前というより、IP通信を保護するためのセキュリティアーキテクチャです。

IPsecによって提供される代表的なセキュリティサービスには、

  • 通信内容の機密性
  • データの完全性
  • データ送信元の認証
  • リプレイ攻撃への対策

などがあります。

「IPsec=暗号化」と覚えても今回の問題には正解できますが、

IPsecは暗号化だけを行うものではない

というところまで理解しておくと、別の問題にも対応しやすくなります。


IPv6ならIPsecで自動的に暗号化される?

ここは誤解しやすいポイントです。

問題文に「IPv6」とあるため、

IPv6はIPsecで暗号化されている

と思ってしまうかもしれません。

しかし、IPv6を使用しただけで通信が自動的にIPsecで暗号化されるわけではありません。

IPsecはIPv4でもIPv6でも利用できます。

IPv6とIPsecには歴史的に深い関係がありますが、現在のIPv6ノード要件ではIPsecアーキテクチャのサポートは「MUST(必須)」ではなく「SHOULD(推奨)」とされています。

したがって、

IPv6
  ↓
必ず暗号化される

ではありません。

正しくは、

IPv6通信
   │
   ├─ IPsecを使用しない → IPsecによる暗号化なし
   │
   └─ IPsecを使用する
           ↓
      IP層で通信を保護

と理解しておきましょう。


各選択肢の解説

ア:IPsec【正解】

IPsecは、IP層で通信を保護するための仕組みです。

IPv4とIPv6の両方で利用でき、IPsec VPNなどにも利用されます。

今回の問題では、

「ネットワーク層で暗号化」

という条件に該当するため、これが正解です。


イ:PPP【誤り】

PPP(Point-to-Point Protocol)は、ポイントツーポイントのリンク上で通信するためのプロトコルです。

OSI参照モデルでは、主にデータリンク層に位置付けられます。

ダイヤルアップ接続や、PPPをEthernet上で利用するPPPoEなどで使われてきました。

PPPそのものは、今回問われているネットワーク層で暗号化するための技術ではありません


ウ:SSH【誤り】

SSH(Secure Shell)は、安全なリモートログインなどに使用されるプロトコルです。

例えば、離れた場所にあるLinuxサーバを操作するときなどに利用されます。

試験対策上は、アプリケーション層の技術として整理すると分かりやすいでしょう。

したがって、ネットワーク層でIP通信を暗号化する今回の答えにはなりません。


エ:TLS【誤り】

TLS(Transport Layer Security)は、クライアントとサーバ間に安全な通信路を提供するためのプロトコルです。

代表例が、

HTTPS = HTTP + TLS

です。

TLSでは、盗聴や改ざん、なりすましなどへの対策となるセキュアな通信路を提供します。

ただし、名前に「Transport Layer」と入っているからといって、

「TLS=OSI参照モデルのトランスポート層そのもの」

と単純に覚えるのは避けた方がよいでしょう。

典型的なHTTPS通信なら、

HTTP
 ↓
TLS
 ↓
TCP
 ↓
IP

という関係になります。

TLSは上位プロトコルの通信を保護するものであり、今回求められているIP層での暗号化には該当しません。TLSは下位のトランスポートに信頼できる順序付きデータストリームを要求し、その上でアプリケーションの通信を保護します。


問題の用語解説

IPsec

Internet Protocol Securityの略です。

IPv4・IPv6のIP通信に対して、暗号化や完全性、データ送信元認証などのセキュリティサービスを提供します。

IPsecには代表的に、

  • トランスポートモード
  • トンネルモード

という二つの動作モードがあります。

特にトンネルモードは、IPsec VPNなどで利用されます。


IPv6

IPv6(Internet Protocol Version 6)は、IPv4に続くIPのバージョンです。

IPv4ではアドレス長が32ビットですが、IPv6では128ビットになっています。

IPv4のアドレス空間不足などの課題に対応するために策定されました。

IPsecはIPv6専用ではなく、IPv4とIPv6の両方で利用できます


PPP

PPPはPoint-to-Point Protocolの略です。

2点間のリンクでデータをやり取りするために利用される、データリンク層のプロトコルです。


SSH

SSHはSecure Shellの略です。

ネットワーク経由で別のコンピュータに安全にログインしたり、コマンドを実行したりするときなどに使用します。


TLS

TLSはTransport Layer Securityの略です。

HTTPSなどで利用され、クライアントとサーバ間に安全な通信路を提供します。

TLS 1.3では、サーバ認証、必要に応じたクライアント認証、通信内容の保護などの仕組みが規定されています。


IPsec・TLS・SSH・PPPを整理する

今回の4つを簡単に整理すると、次のようになります。

技術主な役割試験対策上の位置付け
IPsecIP通信の暗号化・認証などネットワーク層
PPP2点間リンクでの通信データリンク層
SSH安全なリモートログインなどアプリケーション層
TLSHTTPSなど上位プロトコルの通信保護TCPなどの上で利用

特に、

IPそのものを守る
      ↓
    IPsec

Webなどの通信を守る
      ↓
     TLS

リモートログインを安全にする
      ↓
     SSH

という「何を守るのか」で整理すると覚えやすくなります。


体系的位置づけ

今回の問題は、応用情報技術者試験のテクノロジ系に位置付けられる内容です。

大きく整理すると、

テクノロジ系
   ↓
技術要素
   ↓
ネットワーク
   ↓
ネットワークセキュリティ
   ↓
IPsec

という流れで理解できます。

ネットワークの問題では、プロトコル名だけを暗記するのではなく、

「どの層で、何をする技術なのか」

までセットで整理しておくことが重要です。


今回の問題の重要ポイント

今回、特に押さえておきたいポイントは次のとおりです。

ポイント内容
IPsecIP層で通信を保護する
対応IPIPv4・IPv6の両方
IPv6との関係IPv6だから自動的にIPsecで暗号化されるわけではない
TLSHTTPSなどで利用されるが、IP層の暗号化ではない
SSH安全なリモートログインなどに利用
PPPデータリンク層のプロトコル

試験問題を解くだけなら、

「ネットワーク層」→「IP」→「IPsec」

という連想ができれば十分です。

さらに一歩進んで、

「IPv6=自動的にIPsecで暗号化」ではない

ところまで理解しておけば、知識としてもより正確です。


まとめ

今回の問題の正解は、

ア:IPsec

です。

IPsecはIPv4・IPv6のIP通信に対して、暗号化や完全性、データ送信元認証などのセキュリティサービスを提供します。

そして今回最大のポイントは、

IPsecがIP層、つまりネットワーク層で通信を保護する技術であること

です。

覚え方としては、

IPをSecureにするからIPsec

くらいシンプルに結び付けておくとよいでしょう。

一方で、IPv6を使えば自動的にIPsecで暗号化されるわけではありません。この点は混同しないようにしておきましょう。現在のIPv6ノード要件でも、IPsecアーキテクチャのサポートは必須ではなく推奨とされています。


参考情報

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