応用情報技術者試験過去問を解いてみた R6年度 春期 問79

応用情報技術者試験

はじめに

今回も、応用情報技術者試験の過去問を解いていきます。

今回のテーマは「不正競争防止法」です。

法律系の問題は、条文を丸暗記しようとすると混乱しやすい分野です。しかし、

  • 何を守る法律なのか
  • どのような行為が「不正競争」とされるのか
  • どの要件が問題になっているのか

という視点で整理すると、選択肢を判断しやすくなります。

特に応用情報技術者試験では、著作権法、特許法、商標法、不正競争防止法の違いを押さえておくことが重要です。

今回は、コピー商品の販売やドメイン名の取得がどのような場合に不正競争となるのかを見ていきます。


問題

不正競争防止法の不正競争行為に該当するものはどれか。

選択肢

ア
A社と競争関係になっていないB社が,偶然に,A社の社名に類似のドメイン名を取得した。

イ
ある地方だけで有名な和菓子に類似した商品名の飲料を,その和菓子が有名ではない地方で販売し,利益を取得した。

ウ
商標権のない商品名を用いたドメイン名を取得し,当該商品のコピー商品を販売し,利益を取得した。

エ
他社サービスと類似しているが,自社サービスに適しており,正当な利益を得る目的があると認められるドメインを取得し,それを利用した。


解答

正解:ウ


解説

不正競争防止法は、事業者間の公正な競争を確保するため、不正競争の防止や、不正競争によって生じた損害への対応などを定めた法律です。

簡単にいえば、「商売上の不公正な行為を防ぐ法律」と考えると分かりやすいでしょう。

不正競争防止法が対象とする行為には、次のようなものがあります。

  • 周知な商品名や営業表示を使って混同を生じさせる行為
  • 他人の著名な商品等表示を無断で使用する行為
  • 他人の商品形態を模倣した商品を提供する行為
  • 営業秘密を不正に取得・使用・開示する行為
  • 不正な目的で他人の表示に類似するドメイン名を取得・使用する行為
  • 商品の品質や原産地などについて誤認させる行為

本問では、「商品名やドメイン名が似ている」という事実だけでなく、コピー商品の販売や、ドメイン名を取得した目的に注目することがポイントです。

各選択肢の解説

選択肢判定理由
ア誤り偶然の取得であり、不正利益目的や加害目的が認められません。
イ誤り和菓子が知られていない地域での販売であり、本問の条件では出所の混同が生じるとは考えにくいからです。
ウ正しいコピー商品の販売が、他人の商品形態を模倣した商品の提供に当たると考えられます。ドメイン名についても、不正な目的が認められる場合は不正競争となります。
エ誤り正当な目的で取得・使用しており、不正利益目的や加害目的が認められません。

ア:偶然に類似したドメイン名を取得した場合

アは不正競争行為に該当しません。

不正競争防止法では、他人の商品やサービスを示す表示と同一または類似するドメイン名について、次のいずれかの目的で取得・保有・使用する行為を不正競争としています。

  • 不正の利益を得る目的
  • 他人に損害を加える目的

アでは「偶然に取得した」と明記されています。そのため、不正利益目的や加害目的がなく、本問では不正競争行為に該当しません。

なお、A社とB社が競争関係にないことだけで判断するのではなく、「どのような目的でドメイン名を取得したのか」を確認することが重要です。

イ:地域限定で知られた商品名を別の地域で使用した場合

イも不正競争行為に該当しません。

不正競争防止法では、需要者の間に広く認識されている商品名や店名などと同一または類似する表示を使用し、他人の商品や営業との混同を生じさせる行為を規制しています。

地域限定で知られている表示でも、その地域では保護される可能性があります。したがって、「全国的に有名でなければ保護されない」というわけではありません。

ただし、本問では、その和菓子が有名ではない別の地域で、和菓子とは異なる飲料を販売しています。この条件からは、購入者が元の和菓子と関係がある商品だと誤認する可能性は低く、不正競争行為には該当しないと判断します。

ウ:コピー商品を販売した場合

ウが正解です。

不正競争防止法では、他人の商品形態を模倣した商品を譲渡したり、販売のために展示したりする行為などを、不正競争の一つとして定めています。

選択肢ウでは、商品名を用いたドメイン名を取得したうえで、その商品のコピー商品を販売しています。そのため、試験問題では、コピー商品の販売が「他人の商品形態を模倣した商品の提供」に当たるものとして、不正競争行為に該当すると判断します。

また、他人の商品名などと同一または類似するドメイン名を、不正な利益を得る目的や他人に損害を加える目的で取得・使用した場合には、ドメイン名に関する不正競争にも該当します。

ここで注意したいのは、単に「利益を得る目的」があれば不正になるわけではないことです。企業が正当に利益を得ようとするのは、ごく普通の事業活動です。問題になるのは、他人の信用へのただ乗りなどによって、不正の利益を得ようとする目的がある場合です。

なお、実際に商品形態模倣行為に該当するかどうかは、商品の形態、模倣の内容、販売開始からの期間、適用除外などを含めて個別に判断されます。本問では、試験問題として示された条件に基づいて判断します。

エ:正当な目的でドメイン名を取得した場合

エは不正競争行為に該当しません。

ドメイン名が他社サービスと類似しているだけで、直ちに不正競争となるわけではありません。

エでは、自社サービスに適したドメイン名であり、正当な利益を得る目的があるとされています。そのため、不正利益目的や加害目的が認められず、本問では不正競争行為に該当しません。

問題の用語解説

不正競争防止法とは

不正競争防止法は、事業者間の公正な競争を確保するための法律です。

知的財産に関係する法律ではありますが、特許権や商標権のような登録された権利だけを保護するものではありません。

周知・著名な商品等表示、商品の形態、営業秘密、限定提供データなどをめぐる不公正な行為も規制対象としています。

商品等表示とは

商品等表示とは、人の業務に関係する氏名、商号、商標、標章、商品の容器・包装など、商品や営業を示す表示のことです。

例えば、次のようなものが該当します。

  • 会社名
  • 店名
  • 商品名
  • ブランド名
  • ロゴマーク
  • 商品の容器や包装

商品形態模倣行為とは

他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡、貸渡し、展示、輸出、輸入する行為などです。

ただし、似た商品であれば何でも該当するわけではありません。ありふれた形態である場合や、模倣商品の善意取得者に関する場合などには、適用除外があります。また、原則として、日本国内で最初に販売された日から3年を経過した商品についても適用除外となります。

試験対策では、まず「コピー商品の提供は、不正競争防止法の対象になり得る」と押さえておきましょう。

ドメイン名とは

ドメイン名とは、インターネット上の住所に当たる文字列です。

例えば、次のようなものがあります。

  • example.com
  • example.co.jp

有名企業や商品の表示に似せたドメイン名を取得し、偽物の販売サイトに誘導したり、企業に高額で買い取らせようとしたりする行為は、ドメイン名に関する不正競争に該当する可能性があります。

商標法との違い

商標法と不正競争防止法は、どちらも商品名やブランド名に関係しますが、保護の仕組みが異なります。

項目商標法不正競争防止法
登録商標権の発生には原則として設定登録が必要不正競争防止法上の登録制度はない
主な対象登録商標周知・著名な商品等表示、商品形態、営業秘密など
保護の仕組み登録商標を排他的な権利として保護する法律で定められた不正競争行為を規制する
主な判断要素登録内容、指定商品・指定役務、商標の類似など周知性、著名性、混同、形態の模倣、不正の目的など
例登録された商品名やロゴ周知な店名の冒用、コピー商品の販売、不正なドメイン取得

商標登録されていない商品名でも、不正競争防止法の要件を満たせば保護されることがあります。

ただし、「未登録の商品名なら何でも保護される」という意味ではありません。どの不正競争行為に該当するのかを確認し、その類型ごとの要件を満たす必要があります。

体系的位置づけ

この問題は、応用情報技術者試験のストラテジ系にある「企業と法務」の分野に位置づけられます。

大分類中分類主なテーマ
企業と法務法務知的財産権、不正競争防止法、個人情報保護法など

この分野では、次の法律も併せて整理しておきましょう。

  • 著作権法
  • 特許法
  • 実用新案法
  • 意匠法
  • 商標法
  • 不正競争防止法

今回の問題の重要ポイント

1.商標登録がなくても保護される場合がある

不正競争防止法では、商標登録されていない商品名や店名であっても、周知性などの要件を満たせば保護される場合があります。

ただし、登録が不要だからといって、すべての名称が自動的に保護されるわけではありません。

2.不正競争行為には複数の種類がある

「他人の信用を利用した」「悪意があった」という一つの基準だけで、すべてを判断することはできません。

本問では、次の二つを分けて考えることが重要です。

  • コピー商品の販売:商品形態模倣行為
  • 類似ドメイン名の取得・使用:不正利益目的または加害目的が必要

3.利益目的と不正利益目的は異なる

利益を得ること自体は違法ではありません。

ドメイン名に関する不正競争では、他人の信用にただ乗りするなど、「不正の利益を得る目的」があるかどうかを確認します。

4.地域限定の知名度でも保護される可能性がある

全国的に有名でなくても、特定の地域の需要者に広く知られていれば、その地域では周知表示として保護される可能性があります。

「地方でしか有名でないから保護されない」と覚えるのではなく、知名度のある地域と実際に使用された地域、混同のおそれを確認しましょう。

まとめ

今回のポイントを整理します。

  • 正解は「ウ」
  • コピー商品の販売は、商品形態模倣行為として不正競争になり得る
  • 類似ドメイン名は、取得しただけで直ちに不正競争になるわけではない
  • ドメイン名については、不正利益目的または加害目的が重要
  • 商標登録のない商品名でも、不正競争防止法によって保護される場合がある
  • 地域限定で知られた表示も、その地域では保護される可能性がある

法律問題では、「何となくズルそうだから」と判断するだけでは、少し危険です。

何が似ているのか、何をしたのか、どのような目的があったのか。この三つに分けて考えると、選択肢を落ち着いて判断できるようになります。


参考情報

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