はじめに
今回も、応用情報技術者試験の過去問を解いていきます。
今回のテーマは 経営戦略分野の「競争環境分析」 です。
企業がどのような競争環境の中で事業を行っているのかを分析するための代表的なフレームワークが問われています。
この問題では、単に用語を覚えるだけではなく、
- それぞれの分析手法が何を見るものなのか
- 外部環境を見るのか
- 業界構造を見るのか
- 自社の強みを見るのか
という違いを整理しておくことが重要です。
問題
企業が属する業界の競争状態と収益構造を,
- 新規参入者の脅威
- 供給者の支配力
- 買い手の交渉力
- 代替製品・サービスの脅威
- 既存競合者同士の敵対関係
の要素に分類して,分析するフレームワークはどれか。
選択肢
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| ア | PEST分析 |
| イ | VRIO分析 |
| ウ | バリューチェーン分析 |
| エ | ファイブフォース分析 |
解答
正解
エ:ファイブフォース分析
解説
ファイブフォース分析は、マイケル・E・ポーターが提唱した競争戦略のフレームワークです。
企業が属する業界について、5つの競争要因から構造を分析し、その業界の収益性や競争の厳しさを把握するために使われます。
5つの要因は次のとおりです。
| 5つの競争要因 | 内容 |
|---|---|
| 新規参入者の脅威 | 新しい企業が市場へ参入しやすいか |
| 供給者の交渉力 | 部品・原材料・サービスなどを提供する側の力が強いか |
| 買い手の交渉力 | 顧客が価格・品質・取引条件などで強い交渉力を持つか |
| 代替品の脅威 | 同じニーズを別の製品・サービスで満たされる可能性があるか |
| 既存企業間の競争 | すでに業界内にいる企業同士の競争が激しいか |
イメージすると、次のような形です。
新規参入者の脅威
↑
│
│
供給者の交渉力 ← 既存企業間の競争 → 買い手の交渉力
│
│
↓
代替品の脅威
一般に、これらの競争圧力が強いほど、企業は利益を確保しにくくなり、業界全体の収益性も低くなりやすいと考えます。
他の選択肢の解説
ア:PEST分析
PEST分析は、企業を取り巻くマクロな外部環境を分析する手法です。
PESTは次の4つの頭文字です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| P | Political:政治的要因 |
| E | Economic:経済的要因 |
| S | Social:社会的要因 |
| T | Technological:技術的要因 |
例えば、
- 法改正
- 景気変動
- 少子高齢化
- AI技術の発展
などを分析します。
今回の問題は「業界内の競争構造」を問うているため、PEST分析ではありません。
イ:VRIO分析
VRIO分析は、企業が持つ経営資源や能力が競争優位につながるかを分析するフレームワークです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| V | Value:価値 |
| R | Rarity:希少性 |
| I | Imitability:模倣困難性 |
| O | Organization:組織 |
簡単にいえば、
「自社の強みは、本当に競争力になるのか」
を見る分析です。
今回の問題は自社内部ではなく、業界の競争環境を分析しているため不正解です。
ウ:バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、企業の活動をいくつかに分解し、どの活動で価値や競争優位が生み出されているかを分析する手法です。
代表的な活動には、
- 調達
- 製造
- 物流
- 販売
- サービス
などがあります。
つまり、
「会社の中のどこで価値を生み出しているのか」
を見る分析です。
今回の問題のような業界全体の競争構造を分析するものではありません。
エ:ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、業界を取り巻く5つの競争要因から、業界の競争構造や収益性を分析する手法です。
問題文にある5項目が、そのままファイブフォース分析の構成要素になっているため、これが正解です。
問題の用語解説
今回登場した分析手法は、何を分析するかで整理すると覚えやすくなります。
| 分析手法 | 主に何を見るか |
|---|---|
| PEST分析 | 政治・経済・社会・技術などのマクロ環境 |
| ファイブフォース分析 | 業界の競争構造・収益性 |
| VRIO分析 | 自社の経営資源・能力 |
| バリューチェーン分析 | 企業活動のどこで価値が生まれるか |
ここは試験対策としてかなり重要です。
特に、
PEST
↓
会社の外側を広く見る
ファイブフォース
↓
業界を見る
VRIO
↓
自社の強みを見る
バリューチェーン
↓
自社の活動を見る
と整理すると混同しにくくなります。
体系的位置づけ
今回の問題は、応用情報技術者試験のストラテジ系に分類されます。
体系的には次の位置づけです。
ストラテジ系
↓
経営戦略
↓
経営戦略マネジメント
↓
経営戦略手法
↓
ファイブフォース分析
経営戦略分野では、ファイブフォース分析だけでなく、
- SWOT分析
- PEST分析
- VRIO分析
- バリューチェーン分析
- PPM
など、複数のフレームワークが登場します。
そのため、名前だけではなく、
「何を分析するための手法なのか」
までセットで理解しておくことが重要です。
今回の問題の重要ポイント
今回の問題で最も重要なのは、
「業界の競争構造を見る分析はファイブフォース分析」
という点です。
試験では、分析手法の名前を直接聞くよりも、
この分析では何を調べているのか
という形で問われることがあります。
そのため、次の対応関係を覚えておきましょう。
| キーワード | 分析手法 |
|---|---|
| 政治・経済・社会・技術 | PEST分析 |
| 新規参入・供給者・買い手・代替品・競合 | ファイブフォース分析 |
| 価値・希少性・模倣困難性・組織 | VRIO分析 |
| 調達・製造・販売・サービス | バリューチェーン分析 |
特に、
「新規参入者」「買い手」「売り手」「代替品」「競合」
が出てきたら、ファイブフォース分析と判断してよいでしょう。
実務ではどう使うのか
例えば、新しい業界への参入を検討しているとします。
単純に、
「市場が大きそうだから参入しよう」
と考えるだけでは危険です。
実際には、
- 新規参入しやすいのか
- 強い競合企業が多くないか
- 顧客の価格交渉力が強くないか
- 供給者に依存しすぎていないか
- 他のサービスに簡単に置き換えられないか
などを確認する必要があります。
ファイブフォース分析を使うことで、
「その業界で利益を確保しやすい構造になっているか」
を整理して考えられるわけです。
まとめ
今回の問題の正解は、
エ:ファイブフォース分析
です。
ファイブフォース分析では、
- 新規参入者の脅威
- 供給者の交渉力
- 買い手の交渉力
- 代替品の脅威
- 既存企業間の競争
という5つの競争要因から、業界の競争構造や収益性を分析します。
今回のポイントは、
「ファイブフォース=業界を見る分析」
と覚えることです。
さらに、
- PEST=マクロな外部環境
- ファイブフォース=業界
- VRIO=自社の経営資源
- バリューチェーン=自社の活動
という形で整理しておけば、似た分析手法が出てきても判断しやすくなります。


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