はじめに
今回も、応用情報技術者試験の過去問を解いていきます。
今回のテーマは、JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)における「リスクの管理」です。
プロジェクトでは、
- 納期遅延
- 品質不良
- 人員不足
- 仕様変更
- コスト増加
など、さまざまなリスクが発生する可能性があります。
そのため、プロジェクトマネジメントでは、
どんなリスクがあるのかを特定し、優先順位をつけ、対策を考え、その対策が有効かを確認する
という流れが重要になります。
今回の問題では、その中でも「リスクの管理」とは何をするプロセスなのかが問われています。
問題
JIS Q 21500:2018(プロジェクトマネジメントの手引)によれば、プロセス“リスクの管理”の目的はどれか。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| ア | 特定したリスクに適切な処置を行うためにリスクを測定して、その優先順位を定める。 |
| イ | 発生した場合に、プロジェクトの目標にプラス又はマイナスの影響を与えることがある潜在的リスク事象及びその特性を決定する。 |
| ウ | プロジェクトの目標への機会を高めて脅威を軽減するために、選択肢を作成して対策を決定する。 |
| エ | リスクへの対応を実行するかどうか及びそれが期待する効果を上げられるかどうかを明らかにし、プロジェクトの混乱を最小限にする。 |
解答
正解は「エ」です。
リスクへの対応を実行するかどうか及びそれが期待する効果を上げられるかどうかを明らかにし、プロジェクトの混乱を最小限にする。
今回のポイントは、
「リスクへの対応」と「リスクの管理」は別のプロセス
ということです。
「対策を考える」のがリスクへの対応であり、
「その対策を実行する必要があるか、効果が出ているかを確認する」のがリスクの管理です。
解説
JIS Q 21500:2018では、リスクに関するプロセスを複数に分けて考えます。
大きく整理すると、次の流れです。
リスクの特定
↓
リスクの評価
↓
リスクへの対応
↓
リスクの管理
それぞれの役割を簡単に整理すると、次のようになります。
| プロセス | 主な内容 |
|---|---|
| リスクの特定 | どのようなリスクがあるかを明らかにする |
| リスクの評価 | リスクを測定し、優先順位を決める |
| リスクへの対応 | リスクへの対策を考えて決定する |
| リスクの管理 | 対応の実行や効果を確認する |
今回問われているのは、最後の「リスクの管理」です。
したがって、
- 対応を実行する必要があるか
- 期待した効果が出ているか
- プロジェクトへの影響を最小限にできているか
を確認する「エ」が正解となります。
各選択肢の解説
ア:リスクの評価
特定したリスクに適切な処置を行うためにリスクを測定して、その優先順位を定める。
これはリスクの評価に該当します。
すでに洗い出したリスクに対して、
- どのくらい起こりやすいか
- 起きた場合の影響は大きいか
- どのリスクから優先して対応すべきか
を判断する段階です。
そのため、今回の「リスクの管理」ではありません。
イ:リスクの特定
発生した場合に、プロジェクトの目標にプラス又はマイナスの影響を与えることがある潜在的リスク事象及びその特性を決定する。
これはリスクの特定です。
つまり、
「そもそも、どんなリスクがありそうか」
を洗い出す段階です。
例えば、
- 担当者が退職するかもしれない
- 納品が遅れるかもしれない
- 新技術によって開発効率が上がるかもしれない
といった事象を見つけます。
ウ:リスクへの対応
プロジェクトの目標への機会を高めて脅威を軽減するために、選択肢を作成して対策を決定する。
これはリスクへの対応です。
ここが今回もっとも間違えやすいポイントです。
ウでは、
選択肢を作成して対策を決定する
と書かれています。
つまり、
「リスクに対して、どう対応するかを決める」
段階です。
したがって、「リスクの管理」ではありません。
エ:リスクの管理
リスクへの対応を実行するかどうか及びそれが期待する効果を上げられるかどうかを明らかにし、プロジェクトの混乱を最小限にする。
これが正解です。
すでに考えたリスク対応について、
- 本当に実行すべきか
- 実行した対策が効果を発揮しているか
- 状況に変化がないか
などを確認します。
つまり、
「対策を決めて終わりではなく、その後も確認する」
のがリスクの管理です。
問題の用語解説
リスクとは
リスクというと、
「悪いことが起きる可能性」
というイメージを持ちやすいですが、プロジェクトマネジメントでは必ずしも悪い意味だけではありません。
リスクには、
- プラスの影響を与えるもの
- マイナスの影響を与えるもの
の両方があります。
一般的には、
| 種類 | 意味 |
|---|---|
| 機会 | プラスの影響を与える可能性 |
| 脅威 | マイナスの影響を与える可能性 |
と整理できます。
例えば、
新しい技術を導入する
↓
開発効率が大幅に上がる
↓
機会
一方で、
新しい技術を導入する
↓
トラブルが発生して納期が遅れる
↓
脅威
という可能性もあります。
同じ出来事でも、プラスとマイナスの両面があるということです。
リスクへの対応とは
リスクへの対応とは、特定・評価したリスクに対して、
「どう対処するのか」
を決めることです。
脅威に対する代表的な対応として、次のような方法があります。
| 対応方法 | 内容 |
|---|---|
| 回避 | リスクそのものが発生しないようにする |
| 軽減 | 発生確率や影響を小さくする |
| 転嫁 | 保険などによって他者へ影響を移す |
| 受容 | リスクを認識したうえで受け入れる |
例えば、
「サーバ障害が発生する可能性がある」
というリスクに対して、
- 冗長化する → 軽減
- クラウドサービスを利用する → 転嫁の要素
- 障害時の復旧手順を準備する → 影響の軽減
などの対策を考えます。
なお、これらは主に脅威への対応です。
機会に対しては、発生する可能性や効果を高める方向で対応します。
「リスクへの対応」と「リスクの管理」の違い
今回の問題では、この違いが非常に重要です。
| 項目 | リスクへの対応 | リスクの管理 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 対策を決める | 対策を確認する |
| キーワード | 選択肢、対策、決定 | 実行、効果、確認 |
| 今回の選択肢 | ウ | エ |
例えば、
リスク
「主要メンバーが退職するかもしれない」
という場合を考えてみます。
まず、
引継ぎ資料を作る
複数人で業務を共有する
という対策を決めます。
これがリスクへの対応です。
その後、
本当に引継ぎが進んでいるか?
業務共有によって属人化が減ったか?
追加対策は必要ないか?
を確認します。
これがリスクの管理です。
体系的位置づけ
今回のテーマは、応用情報技術者試験の中ではプロジェクトマネジメント分野に位置づけられます。
プロジェクトマネジメント
│
└─ リスク
│
├─ リスクの特定
│
├─ リスクの評価
│
├─ リスクへの対応
│
└─ リスクの管理
試験では、それぞれのプロセスの名称そのものよりも、
「具体的に何をしているのか」
から判断させる問題が多く出題されます。
今回の問題の重要ポイント
今回の問題では、次の4つをセットで覚えておくと非常に分かりやすいです。
| キーワード | プロセス |
|---|---|
| リスク事象を洗い出す | リスクの特定 |
| 測定・優先順位を決める | リスクの評価 |
| 対策を決める | リスクへの対応 |
| 実行・効果を確認する | リスクの管理 |
特に重要なのが、
対策を決める
↓
リスクへの対応
と、
対策の実行や効果を確認する
↓
リスクの管理
の違いです。
今回の問題では、
「期待する効果を上げられるかどうかを明らかにする」
という表現があるため、リスクの管理だと判断できます。
まとめ
今回の問題の正解は、エです。
ポイントは、
「リスクへの対応」と「リスクの管理」を区別すること
です。
整理すると、
特定
「何が起こる?」
評価
「どれが重要?」
対応
「どうする?」
管理
「ちゃんと効いている?」
と覚えると分かりやすいです。
特に試験では、
- 「優先順位」→ リスクの評価
- 「対策を決定」→ リスクへの対応
- 「実行・効果を確認」→ リスクの管理
というキーワードに注目すると、選択肢を絞りやすくなります。
似た言葉が並んでいるため一見難しく見えますが、何をしている段階なのかを考えれば判断しやすい問題です。

コメント