はじめに
今回も、応用情報技術者試験の過去問を解いていきます。
今回のテーマは EMS(Electronics Manufacturing Services) です。
EMSは、電子機器の製造を外部企業に委託するときに登場する考え方です。
似た用語として、
- OEM
- ODM
- ファブレス
などがあり、「結局どこが違うの?」となりやすいところでもあります。
今回の問題では、細かい違いを全部暗記するよりも、
「誰が製造するのか」
に注目すると正解を判断しやすくなります。
問題
問65
EMS(Electronics Manufacturing Services)の説明として,適切なものはどれか。
選択肢
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| ア | 相手先ブランドで販売する電子機器の設計だけを受託し,製造は相手先で行う。 |
| イ | 外部から調達した電子機器に付加価値を加えて,自社ブランドで販売する。 |
| ウ | 自社ブランドで販売する電子機器のソフトウェア開発だけを外部に委託し,ハードウェアは自社で設計製造する。 |
| エ | 生産設備をもつ企業が,他社からの委託を受けて電子機器を製造する。 |
解答
正解
エ
生産設備をもつ企業が,他社からの委託を受けて電子機器を製造する。
これがEMSの正しい説明です。
解説
EMSは、
Electronics Manufacturing Services
の略です。
日本語では、一般に
電子機器の受託製造サービス
と理解すると分かりやすいでしょう。
メーカーが電子機器を販売するとき、必ずしも自社ですべてを製造する必要はありません。
製造設備や生産ノウハウを持つ企業に、製造部分を委託することがあります。
その製造を請け負うのがEMS企業です。
EMSの基本的なイメージ
【委託元企業】
企画・設計・販売など
│
│ 製造を委託
▼
【EMS企業】
電子機器を製造
│
│ 製品を供給
▼
【委託元企業】
販売
この問題では、
「他社から依頼を受けて電子機器を製造する」
という部分が決め手になります。
各選択肢を確認する
ア
相手先ブランドで販売する電子機器の設計だけを受託し、製造は相手先で行う。
誤りです。
EMSの中心は製造の受託です。
この選択肢では「設計だけ」を受託し、製造そのものは相手先が行っているため、EMSの説明にはなっていません。
なお、設計と製造の両方を受託する形態としては、後述するODMがあります。
イ
外部から調達した電子機器に付加価値を加えて、自社ブランドで販売する。
誤りです。
この選択肢では、
「他社から製造を委託される」
というEMSの特徴がありません。
外部から製品を調達して自社ブランドで販売することと、他社のために電子機器を製造するEMSは別の考え方です。
ウ
自社ブランドで販売する電子機器のソフトウェア開発だけを外部に委託し、ハードウェアは自社で設計製造する。
誤りです。
これはソフトウェア開発の一部を外部企業へ委託しているだけです。
EMSが対象とする中心的な活動は、電子機器そのものの製造受託です。
エ
生産設備をもつ企業が、他社からの委託を受けて電子機器を製造する。
正しい説明です。
製造設備などを活用し、他社から委託された電子機器の製造を担っています。
したがって、正解はエです。
問題の用語解説
EMSと一緒に覚えておきたいのが、
- OEM
- ODM
- ファブレス
です。
似ていますが、注目するポイントが少しずつ異なります。
| 用語 | 概要 | イメージ |
|---|---|---|
| EMS | 電子機器の製造を受託するサービス | 電子機器を作る仕事を請け負う |
| OEM | 他社ブランドで販売される製品を製造する | A社ブランドの商品をB社が作る |
| ODM | 設計・開発から製造まで受託する | 設計から製造までまとめて請け負う |
| ファブレス | 自社で製造設備を持たず、製造を外部に委託する事業形態 | 自社は企画・設計などに集中する |
ただし、EMSとOEMは実務上重なる部分もあります。
そのため、
「EMSとOEMは完全に別物」
と覚えるより、それぞれが何に注目した言葉なのかを理解することが大切です。
OEMとは
OEMは、
Original Equipment Manufacturer
の略です。
試験対策では、
他社ブランドで販売される製品を製造すること
と覚えると分かりやすいでしょう。
例えば、
A社
「A社ブランドの商品を販売したい」
│
│ 製造を依頼
▼
B社
「実際の製品を製造する」
│
▼
A社ブランドとして販売
という形です。
ODMとは
ODMは、
Original Design Manufacturer
の略です。
OEMよりも製造企業側の担当範囲が広く、
設計・開発から製造まで請け負う
形態です。
【委託元】
商品のコンセプトなど
│
▼
【ODM企業】
設計
↓
開発
↓
製造
│
▼
委託元ブランドなどで販売
今回の選択肢アは「設計だけ」を受託しており、製造は相手先が行うため、典型的なODMの説明でもありません。
ファブレスとは
ファブレスとは、
自社で製造設備を持たず、製品の製造を外部企業へ委託する事業形態
です。
「fab」は製造工場を意味するfabrication facilityなどに由来します。
つまり、
ファブレス企業
企画・研究・設計など
│
│ 製造委託
▼
外部の製造企業
│
▼
製品完成
という形です。
ここで面白いのが、
ファブレス企業とEMS企業は反対側の立場になりやすい
ということです。
ファブレス企業は「作ってもらう側」、EMS企業は「作る仕事を請け負う側」と考えると整理しやすくなります。
EMS・OEM・ODMをどう覚えるか
試験では、無理に英語の頭文字だけで覚えるよりも、役割で整理する方が安全です。
EMS
→ 電子機器の「製造」を請け負う
OEM
→ 「他社ブランド」の製品を作る
ODM
→ 「設計+製造」まで請け負う
ファブレス
→ 自社工場を持たず「製造を外注する」
特にEMSは、
Manufacturing=製造
に注目すると覚えやすいでしょう。
体系的位置づけ
この問題は、応用情報技術者試験のストラテジ系に関係する内容です。
現在のIPAシラバスで関連知識を整理すると、おおむね次のような位置づけになります。
ストラテジ系
↓
システム戦略
↓
システム企画
↓
調達計画・実施
↓
外部資源の利用
↓
OEM・ODM・ファブレスなど
つまり、この問題は単なる製造業の用語問題ではありません。
企業が、
「どこまで自社で行い、どこから外部企業に任せるのか」
という外部資源活用の考え方にもつながっています。
なぜ企業はEMSを利用するのか
EMSを理解するには、「なぜわざわざ製造を他社に任せるのか」を考えると分かりやすくなります。
例えば、自社で工場を作ろうとすると、
- 工場の建設
- 生産設備の購入
- 製造人員の確保
- 生産技術の蓄積
- 設備の維持管理
などが必要になります。
そこで製造を専門企業に委託すれば、自社は、
企画
↓
研究・開発
↓
設計
↓
マーケティング
↓
販売
といった領域に経営資源を集中しやすくなります。
EMSは単なる「外注」というより、企業が自社の強みに集中するための選択肢の一つと考えると理解しやすいでしょう。
今回の問題の重要ポイント
今回の問題で最も重要なのは、
EMS=電子機器の製造を受託する
という点です。
選択肢を見たときには、
設計だけ?
→ EMSではない
ソフトウェア開発だけ?
→ EMSではない
外部から買って自社ブランド販売?
→ EMSではない
他社から依頼されて電子機器を製造?
→ EMS
と判断できます。
さらに、
誰が設計するのか
誰が製造するのか
誰のブランドで販売するのか
という3つの軸で整理すると、OEMやODMとの違いも理解しやすくなります。
まとめ
今回の正解は、
エ:生産設備をもつ企業が、他社からの委託を受けて電子機器を製造する。
です。
EMSは、
Electronics Manufacturing Services
の略で、電子機器の製造を他社から受託するサービスを指します。
試験対策としては、まず、
EMS=電子機器の製造受託
と覚えておけばOKです。
さらに、
| 用語 | 一言で覚える |
|---|---|
| EMS | 電子機器の製造を受託 |
| OEM | 他社ブランド製品を製造 |
| ODM | 設計から製造まで受託 |
| ファブレス | 自社工場を持たず製造を外注 |
と整理しておけば、似た問題にも対応しやすくなります。
「誰が設計し、誰が製造し、誰のブランドで売るのか」。
この3つを意識して問題を見ることが、今回の攻略ポイントです。

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