はじめに
今回も、応用情報技術者試験の過去問を解いていきます。
今回のテーマは、SaaS(Software as a Service)の課金方式と利益計算です。
この問題では、複数の課金方式を比較し、その中から最も利益が大きくなる方式を選びます。
ポイントは次の3つです。
- 利用量と単価から月額売上を求める
- 月額売上を年間売上に換算する
- 年間売上から運用費を差し引いて利益を求める
計算自体は難しくありませんが、円と万円の単位変換や、月額と年額の違いでミスしやすい問題です。
また、SaaSという言葉が出てくるためクラウド技術の問題に見えますが、試験上はサービスマネジメントの観点で捉えるのが適切です。
問題
SaaS(Software as a Service)による新規サービスを提供するに当たって、顧客への課金方式を検討している。
課金方式①~④のうち、想定利用状況に基づいて最も高い利益が得られる課金方式を採用したときの年間利益は何万円か。
なお、
- 新規サービスの課金は月ごとに行う
- 各月の想定利用状況は同じ
- 新規サービスの運用費:1,050万円/年
とする。
【課金方式】
| 課金方式 | 内容 | 単価 |
|---|---|---|
| ① | 月間サービス利用時間による従量課金 | 4,000円/時間 |
| ② | 月間トランザクション件数による従量課金 | 700円/件 |
| ③ | 月末時点のディスク割当て量による従量課金 | 300円/GB |
| ④ | 月末時点の利用者ID数による従量課金 | 1,600円/ID |
【想定利用状況】
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| サービス利用時間 | 250時間/月 |
| トランザクション件数 | 1,500件/月 |
| ディスク割当て量 | 3,300GB |
| 利用者ID数 | 650ID |
選択肢
- ア:150
- イ:198
- ウ:210
- エ:260
解答
正解は「ウ:210万円」です。
解説
基本的な考え方は、
月額売上
↓
年間売上
↓
年間運用費を引く
↓
年間利益
です。
利益は、
利益 = 売上 − 費用
で求めます。
今回は運用費がどの課金方式でも同じ1,050万円なので、まず各方式の売上を比較すればよいことが分かります。
① サービス利用時間による課金
利用時間は250時間/月、単価は4,000円/時間です。
250 × 4,000 = 1,000,000円
したがって、月額売上は
100万円
です。
年間売上は、
100万円 × 12か月 = 1,200万円
年間利益は、
1,200万円 − 1,050万円 = 150万円
となります。
② トランザクション件数による課金
トランザクション件数は1,500件/月、単価は700円/件です。
1,500 × 700 = 1,050,000円
月額売上は、
105万円
です。
年間売上は、
105万円 × 12か月 = 1,260万円
年間利益は、
1,260万円 − 1,050万円 = 210万円
となります。
③ ディスク割当て量による課金
ディスク割当て量は3,300GB、単価は300円/GBです。
3,300 × 300 = 990,000円
月額売上は、
99万円
です。
年間売上は、
99万円 × 12か月 = 1,188万円
年間利益は、
1,188万円 − 1,050万円 = 138万円
となります。
④ 利用者ID数による課金
利用者ID数は650ID、単価は1,600円/IDです。
650 × 1,600 = 1,040,000円
月額売上は、
104万円
です。
年間売上は、
104万円 × 12か月 = 1,248万円
年間利益は、
1,248万円 − 1,050万円 = 198万円
となります。
各課金方式の比較
| 課金方式 | 月額売上 | 年間売上 | 年間利益 |
|---|---|---|---|
| ① 利用時間 | 100万円 | 1,200万円 | 150万円 |
| ② トランザクション件数 | 105万円 | 1,260万円 | 210万円 |
| ③ ディスク割当て量 | 99万円 | 1,188万円 | 138万円 |
| ④ 利用者ID数 | 104万円 | 1,248万円 | 198万円 |
最も年間利益が大きいのは、
② トランザクション件数による従量課金
です。
したがって、
正解はウ:210万円
となります。
問題の用語解説
SaaSとは
SaaSは、
Software as a Service
の略です。
クラウドサービス事業者が提供するソフトウェアを、利用者がネットワーク経由で利用するサービス形態です。
代表例としては、
- Gmail
- Microsoft 365
- Salesforce
などがあります。
利用者自身がサーバを用意してソフトウェアを運用するのではなく、提供事業者が管理するサービスを利用します。
料金体系には、
- 月額定額制
- ユーザー数課金
- 利用量に応じた従量課金
などがあります。
従量課金とは
従量課金とは、
利用した量に応じて料金が決まる課金方式
です。
例えば、
- 利用時間
- データ保存容量
- トランザクション件数
- APIの実行回数
- 利用者数
などを基準に料金を決めます。
今回の問題では、4種類すべてが従量課金です。
トランザクションとは
トランザクションとは、
一連の処理を論理的な一つの処理単位として扱うもの
です。
例えば銀行振込では、
Aさんの口座から1万円減らす
↓
Bさんの口座に1万円増やす
という複数の処理を、まとめて一つの処理単位として扱います。
Webサービスでは、購入処理や予約処理などをトランザクションとして数える場合があります。
売上と利益の違い
この問題で重要なのが、売上と利益を混同しないことです。
売上は、
顧客から受け取る金額
です。
利益は、
売上からサービス運営に必要な費用を差し引いた金額
です。
つまり、
利益 = 売上 − 費用
となります。
体系的位置づけ
この問題は、応用情報技術者試験の分類では主に、
マネジメント系 → サービスマネジメント
に位置づけられます。
特に、
- ITサービスの設計
- サービス提供方法
- 課金方式
- コストと利益
といった考え方が関係します。
SaaSという言葉が出てくるため、クラウド技術そのものを問う問題に見えます。
しかし今回問われているのは、
SaaSとは何か
ではなく、
サービスをどのような料金体系で提供すると利益が最大になるか
という点です。
そのため、サービスマネジメントの問題として整理しておくと理解しやすいです。
今回の問題の重要ポイント
① 「月額」と「年額」を区別する
問題文では、
- 課金は月ごと
- 運用費は年ごと
となっています。
そのため、
月額売上 × 12
によって年間売上に変換する必要があります。
② 円と万円を混同しない
例えば②では、
1,500 × 700 = 1,050,000円
です。
これは、
105万円
です。
1,050万円ではありません。
単位を一つずつ確認することが重要です。
③ 売上ではなく利益で比較する
今回求めるのは、
最も売上が高い方式
ではなく、
最も利益が高い方式
です。
今回は運用費がどの方式でも同じなので、結果的に売上最大の方式が利益最大になります。
ただし、問題によっては方式ごとに費用が異なるケースもあります。
その場合は、必ず利益まで計算する必要があります。
④ 共通費用なら計算を省略できる
試験時間を短縮するなら、4方式すべての利益を出さなくても構いません。
運用費1,050万円はすべての方式で共通なので、まず月額売上だけ比較します。
① 100万円
② 105万円
③ 99万円
④ 104万円
最大は②です。
そのため②だけ年間利益を計算します。
105万円 × 12
= 1,260万円
1,260万円 − 1,050万円
= 210万円
これで正解を出せます。
本番では、このような計算の省略も有効です。
まとめ
今回の問題では、SaaSの課金方式ごとの売上を比較し、最も高い年間利益を求めました。
計算結果は次のとおりです。
| 課金方式 | 年間利益 |
|---|---|
| ① 利用時間 | 150万円 |
| ② トランザクション件数 | 210万円 |
| ③ ディスク割当て量 | 138万円 |
| ④ 利用者ID数 | 198万円 |
したがって、
正解はウ:210万円
です。
今回の重要ポイントは、
- 利用量 × 単価で月額売上を求める
- 月額売上を12倍して年間売上にする
- 売上から費用を引いて利益を求める
- 円と万円の単位に注意する
- 共通費用なら売上比較だけで候補を絞れる
という点です。
計算問題ではありますが、SaaSなどのITサービスをどのような料金体系で提供するかという、サービス設計の考え方にもつながる問題です。

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