目次
はじめに
電子はかりやロードセル、ひずみゲージを調べていると、
ほぼ必ず登場するのが「ブリッジ回路(ホイートストンブリッジ)」です。
なぜ、わざわざそんな回路を組む必要があるのでしょうか。
抵抗値の変化を測りたいだけなら、抵抗1本を測ればよいのでは?
そんな疑問を持った人も多いはずです。
この記事では、
- なぜブリッジ回路が使われるのか
- なぜ抵抗1本では不十分なのか
- ブリッジ回路で何が“相殺”されているのか
を順番に説明します。
※これは私の考察要素を多分に含んでおりますので、もし「それは違う!」とあれば
コメントなどで指摘していただけると幸甚です。
結論:ブリッジ回路は「不要な変化を消す」ための回路
まず結論からです。
ブリッジ回路が使われる理由は、
微小な抵抗変化と同じオーダーで混ざる可能性のある、外乱(「温度の影響」など)を、
打ち消すためです。
ひずみゲージなどで生じる抵抗変化は、非常に小さく、
- 力による抵抗変化
- 温度による抵抗変化
が、ほぼ同じ大きさで同時に現れる可能性があります。
この2つを区別できないまま測定すると、
「本当に知りたい変化」が分からなくなってしまいます。
ブリッジ回路はその区別をすることができるので、
採用される、というわけです。
抵抗1本で同じことができないのか?
ここで自然に出てくる疑問があります。
わざわざブリッジ回路を組まなくても、
抵抗1本で同じようなことができるのではないか?
私も最初、そのように思いました。
そこで、この疑問に答えてみようと思います。
その前に、抵抗値の変化を数式で表現してみます。
仮に抵抗値が外部温度とひずみ、この2つの因子でのみ変化するとすると、
ひずませた後の抵抗値(R)は次のように変化します。
- :温度による変化
- :歪みによる変化
- Ro:初期の抵抗値
数式で表現できました。
そしで、実際に測定器が見ているのは、この合計値(R)です。
抵抗1本では「原因」を分けられない
問題はここにあります。
抵抗1本の測定で分かるのは、
「抵抗値がどれだけ変わったか」だけです。
しかし、その変化が
- 温度が上がったからなのか
- 力がかかったからなのか
- その両方なのか
は、測定値からは分かりません。
たとえば、抵抗値が0.1%変わったとした場合、次のような考察ができます。
- 温度変化だけで 0.1% 変わった
- 歪みだけで 0.1% 変わった
- 温度 0.05% + 歪み 0.05%
しかし、1つの抵抗値だけの測定だと、これらは、すべて同じ測定結果になります。
つまり、
抵抗1本の測定では、
温度と歪みを数学的に区別できない
ということです。
「温度を測って補正すればいい」は本当に可能?
では、
温度を別で測って、
その分を引けばいいのでは?
という考えはどうでしょうか。
理論上は可能です。
しかし現実には、次の問題があります。
- 抵抗そのものの温度を正確に測れない
- 自己発熱や温度ムラがある
- 温度変化は測定中に刻々と変わる
微小な信号を扱うほど、
「測って引く」という方法は不安定になります。
ブリッジ回路がやっていること
ここでブリッジ回路の出番です。
ブリッジ回路の本質は、
絶対値を測るのではなく、差分を測る
という点にあります。
4つの抵抗を使い、
左右の電圧の差だけを取り出します。
なぜ温度は相殺されるのか
温度変化には、重要な特徴があります。
- 同じ材料
- 同じ環境
にある抵抗は、
ほぼ同じ割合で変化します。
ブリッジ回路では、この「同じように変わる成分」が
引き算によって自然に消えます。
つまり、
温度が何度変わったかを知らなくても、
温度の影響は相殺される
という仕組みです。
歪みは「差」として残る
一方で、歪み(力)は違います。
- かかる場所が違う
- 引張と圧縮で符号が逆になる
といった理由で、
抵抗ごとに変化量が異なります。
その結果、
となり、歪みだけが差分として残るのです。
まとめ:ブリッジ回路が必要な理由
最後に整理します。
- 抵抗1本の測定では
温度と歪みが同じ形で混ざってしまう - 温度変化を正確に測って補正するのは難しい
- ブリッジ回路は
同じように変化する成分(温度)を
回路の構造そのものによって打ち消す - その結果、
微小な歪みによる抵抗変化だけを安定して測定できる
ブリッジ回路は、
「微小だから使う」のではなく、
区別できない変化を、区別できる形に変えるため
に使われているのです。
以上になります。
この考察について、コメントなどあればどんどんください。


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