【雑談】 9 なぜ電子はかりはブリッジ回路を使うのか?抵抗1本ではダメな本当の理由

はじめに

電子はかりやロードセル、ひずみゲージを調べていると、
ほぼ必ず登場するのが「ブリッジ回路(ホイートストンブリッジ)」です。

なぜ、わざわざそんな回路を組む必要があるのでしょうか。
抵抗値の変化を測りたいだけなら、抵抗1本を測ればよいのでは?
そんな疑問を持った人も多いはずです。

この記事では、

  • なぜブリッジ回路が使われるのか
  • なぜ抵抗1本では不十分なのか
  • ブリッジ回路で何が“相殺”されているのか

を順番に説明します。

※これは私の考察要素を多分に含んでおりますので、もし「それは違う!」とあれば
コメントなどで指摘していただけると幸甚です。


結論:ブリッジ回路は「不要な変化を消す」ための回路

まず結論からです。

ブリッジ回路が使われる理由は、
微小な抵抗変化と同じオーダーで混ざる可能性のある、外乱(「温度の影響」など)を、
打ち消すため
です。

ひずみゲージなどで生じる抵抗変化は、非常に小さく、

  • 力による抵抗変化
  • 温度による抵抗変化

が、ほぼ同じ大きさで同時に現れる可能性があります。

この2つを区別できないまま測定すると、
「本当に知りたい変化」が分からなくなってしまいます。

ブリッジ回路はその区別をすることができるので、
採用される、というわけです。


抵抗1本で同じことができないのか?

ここで自然に出てくる疑問があります。

わざわざブリッジ回路を組まなくても、
抵抗1本で同じようなことができるのではないか?

私も最初、そのように思いました。
そこで、この疑問に答えてみようと思います。

その前に、抵抗値の変化を数式で表現してみます。

仮に抵抗値が外部温度とひずみ、この2つの因子でのみ変化するとすると、
ひずませた後の抵抗値(R)は次のように変化します。

R=R0(1+αΔT+GFε)R = R_0 (1 + \alpha \Delta T + GF \varepsilon)

  • αΔT\alpha \Delta T:温度による変化
  • GFεGF \varepsilon:歪みによる変化
  • Ro:初期の抵抗値

数式で表現できました。
そしで、実際に測定器が見ているのは、この合計値(R)です。


抵抗1本では「原因」を分けられない

問題はここにあります。

抵抗1本の測定で分かるのは、
「抵抗値がどれだけ変わったか」だけです。

しかし、その変化が

  • 温度が上がったからなのか
  • 力がかかったからなのか
  • その両方なのか

は、測定値からは分かりません

たとえば、抵抗値が0.1%変わったとした場合、次のような考察ができます。

  • 温度変化だけで 0.1% 変わった
  • 歪みだけで 0.1% 変わった
  • 温度 0.05% + 歪み 0.05%

しかし、1つの抵抗値だけの測定だと、これらは、すべて同じ測定結果になります。

つまり、

抵抗1本の測定では、
温度と歪みを数学的に区別できない

ということです。


「温度を測って補正すればいい」は本当に可能?

では、

温度を別で測って、
その分を引けばいいのでは?

という考えはどうでしょうか。

理論上は可能です。
しかし現実には、次の問題があります。

  • 抵抗そのものの温度を正確に測れない
  • 自己発熱や温度ムラがある
  • 温度変化は測定中に刻々と変わる

微小な信号を扱うほど、
「測って引く」という方法は不安定になります。


ブリッジ回路がやっていること

ここでブリッジ回路の出番です。

ブリッジ回路の本質は、

絶対値を測るのではなく、差分を測る

という点にあります。

4つの抵抗を使い、
左右の電圧の差だけを取り出します。


なぜ温度は相殺されるのか

温度変化には、重要な特徴があります。

  • 同じ材料
  • 同じ環境

にある抵抗は、
ほぼ同じ割合で変化します。

ブリッジ回路では、この「同じように変わる成分」が
引き算によって自然に消えます。(αΔT)(αΔT)=0(\alpha \Delta T) – (\alpha \Delta T) = 0

つまり、

温度が何度変わったかを知らなくても、
温度の影響は相殺される

という仕組みです。


歪みは「差」として残る

一方で、歪み(力)は違います。

  • かかる場所が違う
  • 引張と圧縮で符号が逆になる

といった理由で、
抵抗ごとに変化量が異なります。

その結果、

(+GFε)(GFε)0(+GF\varepsilon) – (-GF\varepsilon) \neq 0

となり、歪みだけが差分として残るのです。


まとめ:ブリッジ回路が必要な理由

最後に整理します。

  • 抵抗1本の測定では
    温度と歪みが同じ形で混ざってしまう
  • 温度変化を正確に測って補正するのは難しい
  • ブリッジ回路は
    同じように変化する成分(温度)を
    回路の構造そのものによって打ち消す
  • その結果、
    微小な歪みによる抵抗変化だけを安定して測定できる

ブリッジ回路は、
「微小だから使う」のではなく、

区別できない変化を、区別できる形に変えるため

に使われているのです。

以上になります。
この考察について、コメントなどあればどんどんください。

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