はじめに
今回も、応用情報技術者試験の過去問を解いていきます。
今回のテーマは、損益分岐点売上高です。
企業活動に関する問題では、
- 固定費
- 変動費
- 限界利益
- 変動費率
- 損益分岐点売上高
といった用語が登場します。
一見すると数字が多くて難しそうですが、考え方はシンプルです。
「売上から変動費を引いた金額で、固定費をどれだけ回収できるか」
ここを理解できれば、公式を丸暗記しなくても解けるようになります。
なお、現在の応用情報技術者試験では、従来の「午前試験」に相当するものは科目Aと呼ばれています。
今回は、損益分岐点売上高の求め方を順番に整理していきます。
問題
問77
損益計算資料から求められる損益分岐点売上高は、何百万円か。
損益計算資料
| 項目 | 金額(百万円) |
|---|---|
| 売上高 | 500 |
| 材料費(変動費) | 200 |
| 外注費(変動費) | 100 |
| 製造固定費 | 100 |
| 粗利益 | 100 |
| 販売固定費 | 80 |
| 利益 | 20 |
選択肢
| 選択肢 | 金額(百万円) |
|---|---|
| ア | 225 |
| イ | 300 |
| ウ | 450 |
| エ | 480 |
解答
正解:ウ(450百万円)
解説
損益分岐点売上高とは、
売上高と総費用が等しくなり、利益が0になる売上高
のことです。
言い換えると、
- 損益分岐点より売上が大きい → 利益が出る
- 損益分岐点と同じ → 利益0
- 損益分岐点より売上が小さい → 損失が出る
という境目です。
今回の問題では、
「固定費を回収するためには、いくら売上が必要なのか」
を計算します。
① 変動費を求める
変動費として示されているのは、
- 材料費:200百万円
- 外注費:100百万円
です。
したがって、
変動費
= 200 + 100
= 300百万円
となります。
② 限界利益を求める
限界利益は、
限界利益
= 売上高 - 変動費
で求められます。
今回の場合、
限界利益
= 500 - 300
= 200百万円
です。
つまり、500百万円を売り上げると、そのうち300百万円は変動費として出ていき、残り200百万円を固定費の回収や利益に使えるということです。
③ 限界利益率を求める
続いて、売上高に占める限界利益の割合を求めます。
限界利益率
= 限界利益 ÷ 売上高
したがって、
200 ÷ 500
= 0.4
= 40%
です。
つまり、
売上高の40%が固定費の回収と利益に使える
ということになります。
④ 固定費を求める
今回の固定費は、
- 製造固定費:100百万円
- 販売固定費:80百万円
です。
したがって、
固定費
= 100 + 80
= 180百万円
となります。
⑤ 損益分岐点売上高を求める
損益分岐点では利益が0になります。
そのため、
限界利益=固定費
となればよいわけです。
限界利益率は40%なので、
売上高 × 40% = 180百万円
となる売上高を求めればよいことになります。
したがって、
損益分岐点売上高
= 固定費 ÷ 限界利益率
= 180 ÷ 0.4
= 450百万円
となります。
よって、
正解は「ウ:450百万円」
です。
図で考える損益分岐点
今回の数字を簡単に図にすると、次のようになります。
| 売上高 | 450百万円 |
|---|---|
| 変動費(60%) | 270百万円 |
| 限界利益(40%) | 180百万円 |
| 固定費 | 180百万円 |
| 利益 | 0百万円 |
売上高450百万円の場合、
売上高 450
↓
変動費 270
↓
限界利益 180
↓
固定費 180
↓
利益 0
となります。
ちょうど固定費を回収しきったところなので、これが損益分岐点です。
問題の用語解説
変動費
変動費とは、売上高や生産量などの操業度に応じて増減する費用です。
代表例として、
- 材料費
- 外注加工費
- 商品の仕入原価
などがあります。
今回の問題では、材料費200百万円と外注費100百万円が変動費として明示されています。
固定費
固定費とは、一定の範囲では、売上高や生産量が変化しても大きく変わらない費用です。
代表例として、
- 家賃
- 減価償却費
- 固定給部分の人件費
- 一定額の管理費
などがあります。
今回の問題では、
製造固定費 100
+
販売固定費 80
=
固定費 180
となります。
限界利益
限界利益とは、
売上高から変動費を差し引いた金額
です。
限界利益
= 売上高 - 変動費
限界利益は、まず固定費の回収に使われます。
そして固定費をすべて回収した後に残った部分が利益になります。
今回なら、
限界利益 200
- 固定費 180
= 利益 20
となり、問題文の利益20百万円とも一致します。
この確認までできると、計算ミスにも気付きやすくなります。
限界利益率
限界利益率とは、売上高のうち何%が限界利益になるかを表したものです。
限界利益率
= 限界利益 ÷ 売上高
今回の場合、
200 ÷ 500
= 40%
です。
変動費率
変動費率とは、売上高に占める変動費の割合です。
今回の場合、
変動費率
= 300 ÷ 500
= 60%
です。
限界利益率と変動費率には、
限界利益率
= 1 - 変動費率
という関係があります。
したがって、
1 - 0.6
= 0.4
として限界利益率を求めても構いません。
損益分岐点売上高
損益分岐点売上高とは、
利益が0になる売上高
です。
基本公式は、
損益分岐点売上高
= 固定費 ÷ 限界利益率
です。
また、限界利益率を変動費率から求める場合は、
損益分岐点売上高
= 固定費 ÷(1 - 変動費率)
とも表せます。
どちらも同じ意味です。
体系的位置づけ
今回の問題は、応用情報技術者試験のストラテジ系に位置付けられる内容です。
大まかには次のように整理できます。
ストラテジ系
↓
企業活動
↓
会計・財務
↓
管理会計
↓
損益分岐点分析
損益分岐点分析は、売上・費用・利益の関係を分析する**CVP分析(Cost-Volume-Profit Analysis)**の代表的な考え方です。
「いくら売れば赤字を脱出できるのか」
「目標利益を得るには、いくら売ればよいのか」
といった経営判断にも利用できます。
今回の問題の重要ポイント
今回の問題で特に押さえておきたいポイントは3つです。
ポイント① 固定費と変動費を分ける
最初にやるべきことは、費用を
固定費と変動費に分類すること
です。
今回なら、
| 分類 | 項目 | 金額 |
|---|---|---|
| 変動費 | 材料費 | 200 |
| 変動費 | 外注費 | 100 |
| 固定費 | 製造固定費 | 100 |
| 固定費 | 販売固定費 | 80 |
となります。
ここを間違えると、その後の計算もすべて間違ってしまいます。
ポイント② 普通の利益率ではなく限界利益率を使う
損益分岐点売上高で使うのは、
利益率ではなく限界利益率
です。
今回の実際の利益は20百万円なので、
20 ÷ 500 = 4%
ですが、この4%を損益分岐点計算に使うわけではありません。
使用するのは、
限界利益率
= 200 ÷ 500
= 40%
です。
ここは混同しないようにしましょう。
ポイント③ 「限界利益=固定費」で考える
公式だけ覚えていると、数字が変わったときに混乱することがあります。
そこで、
損益分岐点では、限界利益と固定費が等しくなる
と覚えておくと理解しやすくなります。
売上
↓
変動費を支払う
↓
残った限界利益で固定費を支払う
↓
ちょうど固定費を払い終えた
↓
利益0
↓
損益分岐点
この流れを理解しておけば、公式を忘れても自分で組み立てられます。
まとめ
今回の問題の正解は、
ウ:450百万円
でした。
計算の流れをまとめると、
① 変動費
200 + 100
= 300
② 限界利益
500 - 300
= 200
③ 限界利益率
200 ÷ 500
= 0.4
④ 固定費
100 + 80
= 180
⑤ 損益分岐点売上高
180 ÷ 0.4
= 450
となります。
特に覚えておきたいのは、
限界利益
= 売上高 - 変動費
限界利益率
= 限界利益 ÷ 売上高
損益分岐点売上高
= 固定費 ÷ 限界利益率
という3つの関係です。
ただし、公式をそのまま暗記するより、
「限界利益で固定費をちょうど回収できる売上高が損益分岐点」
と理解しておく方が、応用問題にも対応しやすくなります。
数字が多く見える問題ですが、実際には「変動費」「固定費」「限界利益」の3つに整理すれば、それほど難しくありません。
科目Aで出題されたときには、ぜひ得点したい問題です。


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