はじめに
今回も、応用情報技術者試験の過去問を解いていきます。
今回のテーマは、JIS X 33002:2017(プロセスアセスメント実施に対する要求事項)です。
「JIS」「ISO」「CMMI」などの規格やモデルは名前が似ており、何を目的としているのか混乱しやすい分野です。
今回の問題では、
JIS X 33002は何をするための規格なのか
を理解しているかがポイントになります。
結論から言うと、JIS X 33002は、組織のプロセスそのものを改善する方法を定める規格ではなく、プロセスを客観的にアセスメントするための要求事項を定めた規格です。
問題
JIS X 33002:2017(プロセスアセスメント実施に対する要求事項)の説明として,適切なものはどれか。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| ア | 組織のプロセスを継続的に改善して品質を高めるための要求事項を規定している。 |
| イ | 組織プロセスの品質を客観的に診断するための要求事項を規定している。 |
| ウ | プロジェクトの実施に重要で,かつ,影響を及ぼすプロジェクトマネジメントの概念及びプロセスに関する包括的な手引きを規定している。 |
| エ | 明確に定義された用語を使用し,ソフトウェアライフサイクルプロセスの共通枠組みを規定している。 |
解答
正解:イ
組織プロセスの品質を客観的に診断するための要求事項を規定している。
解説
JIS X 33002のポイントは、
「プロセスを改善する」ではなく、「プロセスを評価する」
というところです。
プロセスアセスメントとは、組織で行われている業務や開発などのプロセスについて、
- きちんと実施されているか
- 一貫性があるか
- 期待した成果が得られているか
- 客観的に評価できる状態になっているか
などを確認する活動です。
JIS X 33002では、アセスメント結果が客観的・一貫的・再現可能なものになるようにするための要求事項が定められています。
イメージすると、次のようになります。
組織のプロセス
↓
プロセスアセスメントを実施
↓
現状を客観的に評価
↓
問題点・改善の機会を把握
↓
必要に応じて改善活動へ
JIS X 33002が主に扱うのは、この中の
「プロセスアセスメントを実施して、現状を評価する」
部分です。
したがって、選択肢イが正解となります。
各選択肢を解説
ア:組織のプロセスを継続的に改善して品質を高めるための要求事項
これは不適切です。
JIS X 33002は、プロセス改善そのものを規定した規格ではありません。
もちろん、プロセスアセスメントによって見つかった問題点を改善活動につなげることはできます。
しかし、
JIS X 33002
=改善方法を決める規格
ではなく、
JIS X 33002
=プロセスを評価するための要求事項を定める規格
という違いがあります。
試験では、この「評価」と「改善」の違いを意識すると判断しやすくなります。
イ:組織プロセスの品質を客観的に診断するための要求事項
これが正解です。
JIS X 33002は、プロセスアセスメントを適切に実施するための要求事項を規定しています。
単に「なんとなく評価する」のではありません。
アセスメント計画を立て、情報を収集し、結果を評価し、適切に報告するといった一連の活動を通じて、信頼できるアセスメント結果を得ることが重要になります。
試験対策では、
Assessment = 評価・診断
と覚えておくとよいでしょう。
ウ:プロジェクトマネジメントの概念及びプロセスに関する包括的な手引き
これはJIS X 33002の説明ではありません。
この内容は、当時のISO 21500:2012が扱っていたプロジェクトマネジメントのガイダンスに対応する説明です。
ISO 21500は、プロジェクトマネジメントについて、
- どのような考え方があるか
- どのようなプロセスがあるか
- プロジェクトをどのように管理するか
といった内容を扱う規格です。
なお、ISO 21500:2012はその後改訂・再編されており、現在のISO 21500:2021ではプロジェクト、プログラム、ポートフォリオマネジメントの概念や背景を扱います。
試験では、
JIS X 33002
→ プロセスアセスメント
ISO 21500
→ プロジェクトマネジメント
と分けて覚えておきましょう。
エ:ソフトウェアライフサイクルプロセスの共通枠組み
これは、JIS X 0160(ISO/IEC 12207)に関係する説明です。
ISO/IEC 12207では、ソフトウェアのライフサイクルに関するプロセスを体系的に整理しています。
例えば、
- 取得
- 供給
- 開発
- 運用
- 保守
など、ソフトウェアが作られてから運用・保守されるまでの活動を扱います。
つまり、
JIS X 33002
→ プロセスを「評価する」
ISO/IEC 12207
→ ソフトウェアライフサイクルのプロセスを「定義する」
という違いがあります。
問題の用語解説
プロセスとは
ここでいうプロセスとは、何らかの目的を達成するために行われる一連の活動や作業のことです。
例えば、ソフトウェア開発であれば、
要求分析
↓
設計
↓
実装
↓
テスト
↓
運用・保守
といった活動があります。
これら一つひとつもプロセスとして捉えることができます。
プロセスアセスメントとは
Assessmentには、
評価・査定・診断
といった意味があります。
そのため、プロセスアセスメントとは、
組織のプロセスを一定の基準に従って評価すること
と考えると理解しやすいです。
プロセスアセスメントによって、
どのプロセスがうまくいっているか
↓
どこに問題があるか
↓
どこを改善すべきか
といったことを把握できます。
つまり、アセスメント自体が改善ではありませんが、改善のための材料を得る手段になります。
CMMIとは
この問題と一緒に覚えておきたいものが、CMMI(Capability Maturity Model Integration)です。
CMMIは、組織のプロセスやパフォーマンスを改善していくためのモデルです。
JIS X 33002と似た分野に見えますが、役割を単純化すると、
| 用語 | 主な役割 |
| JIS X 33002 | プロセスアセスメントを実施するための要求事項 |
| CMMI | 組織の能力やプロセス改善を進めるためのモデル |
と整理できます。
ただし、
「CMMIは改善だけ、JIS X 33002は評価だけ」
と完全に分けられるわけではありません。
CMMIにも評価の仕組みがあり、JIS X 33002によるアセスメント結果も改善に活用できます。
あくまで試験対策として、中心となる目的の違いを押さえることが重要です。
JIS X 33002と関連規格の違い
今回の選択肢を整理すると、次のようになります。
| 規格・モデル | 主な内容 |
| JIS X 33002 | プロセスアセスメントの実施 |
| CMMI | 組織の能力・プロセス改善 |
| ISO 21500 | プロジェクトマネジメントの概念・枠組み |
| ISO/IEC 12207 | ソフトウェアライフサイクルプロセス |
この表を覚えておくだけでも、似たような問題に対応しやすくなります。
体系的位置づけ
応用情報技術者試験では、このテーマは主に
テクノロジ系 → 開発技術 → ソフトウェア開発管理技術
に関連します。
この周辺では、
- ソフトウェアライフサイクル
- 開発プロセス
- プロセス改善
- プロセスアセスメント
- CMMI
- 品質管理
- プロジェクトマネジメント
などが出題されます。
個々の用語を丸暗記するより、
何を定義するものなのか
何を評価するものなのか
何を改善するためのものなのか
という観点で整理すると覚えやすくなります。
今回の問題の重要ポイント
今回の最重要ポイントは、
Assessmentという言葉から「評価・診断」を連想すること
です。
Assessment
↓
評価・診断
↓
JIS X 33002
と覚えておきましょう。
一方、
Improvement
↓
改善
という意味になります。
したがって、
組織のプロセスを継続的に改善する
という選択肢を見た場合は、
「これはアセスメントそのものの説明ではないな」
と判断できます。
もう一つ大切なのは、
JIS X 33002=成熟度を測るだけの規格
と覚えないことです。
より正確には、
プロセスアセスメントを客観的・一貫的・再現可能に実施するための要求事項を定めた規格
と理解しておきましょう。
まとめ
今回の問題では、JIS X 33002:2017が何を目的とした規格なのかが問われました。
正解は、
イ:組織プロセスの品質を客観的に診断するための要求事項を規定している。
です。
重要なのは、
JIS X 33002
↓
プロセスアセスメント
↓
組織のプロセスを客観的に評価・診断する
という流れです。
プロセスアセスメントを行うことで問題点や改善の機会を把握できますが、JIS X 33002そのものは「継続的改善の方法」を定めた規格ではありません。
試験では、
- プロセスを評価するのか
- プロセスを改善するのか
- プロジェクトを管理するのか
- ソフトウェアライフサイクルを定義するのか
を切り分けて考えることがポイントです。
「Assessment=評価・診断」
ここを押さえておけば、同じタイプの問題にも対応しやすくなります。

コメント