キングジムが、なんと家具の市場に活路を見出そうとしているらしい。あの「テプラ」や「ポメラ」でお馴染みの、文具界の有名企業が家具業界に進出である。まるで、定食屋の親父が「明日から寿司も握る」と言い出したような展開だ。驚くなかれ、背景には深刻な事情がある。
そもそも文具市場は、いまや冬の時代を迎えている。ペーパーレス化が進み、会社では紙の書類が減り、学生はノートよりもタブレットを使う。会議資料もスマホでスクロール。昔は「書く」ことが日常だったのに、今や「入力」する時代である。子どもが鉛筆を削る姿を見て懐かしむ日が来るとは、誰が想像しただろう。少子化という現実も拍車をかけ、文具はまるでボールペンのインクのようにジリジリと減っている。
そんな状況で、キングジムはただ黙って紙の上で泣いているわけにはいかない。「だったら紙じゃなくて、木材を扱えばいいじゃないか!」という発想になったのだろうか。文具のプロが家具業界へ――その発想は、意外に理にかなっている。彼らは長年、“机の上の世界”を支配してきた会社である。デスクまわりを知り尽くしているという点では、家具と親戚のようなものだ。文具が“机の上の小道具”なら、家具は“机そのもの”。これはもう、テリトリーを一段広げただけとも言える。
しかもキングジムは、ただの家具を作るわけではないだろう。文具というのはアイデア勝負の世界だ。100円ショップでも似たようなものが買える中で、「あ、これ欲しい」と思わせる仕掛けがなければ売れない。つまり、使う人の“ちょっとした不便”やワクワクを発見し、そこに刺さる提案をする力が問われる。そうした発想力や観察眼は、家具の分野にも通じるはずだ。「なんとなくここに棚が欲しかったんだよね」という声に応える家具――それを文具メーカーが作ると考えると、なんだかワクワクしてくる。
家具の世界に「キングジム」というラベルが貼られる日も、そう遠くないのかもしれない。その時、家具の端っこにはおそらく小さく“テプラ”が貼られているに違いない。まさに、“文具魂の宿る家具”。結果がどうあれ、キングジムの挑戦は実に楽しみである。
参考情報
2025/11/04 日本経済新聞:文具製造ノウハウ、家具に活用 キングジム 木村美代子社長(Leader’sVoice)

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